あらすじ
春の朝、桜舞う校庭で新しい制服に身を包んだ少女・雫音は、同級生たちの笑い声から距離を置いていた。彼女は「時を止める病」を抱えていた。発作が起きると世界のすべてが静止し、ただ彼女だけが動き続け、孤独に年を重ねてしまう。幼い頃からその病に苦しみ、誰にも理解されない孤独を抱えて生きてきた。
高校入学の日、隣の席の少年・蓮が自然に声をかけてくれる。彼は雫音の秘密を知っても離れず、「どんな姿になっても君は君だ」と言い続ける。だが病は残酷で、雫音は同級生よりも急速に大人び、やがて孤立し、不登校となる。止まった世界で孤独を抱えながらも、戻れば蓮が待っていてくれる。その「待つ」という無力な力が、彼女の心を支え続けた。
年月が流れ、雫音は同級生たちの時間を追い越し、やがて老いていく。髪には白が混じり、皺が刻まれた顔を蓮に見せながらも、彼女は「あなたがいてくれたから孤独じゃなかった」と微笑む。蓮は涙を流しながら告白する。
「雫音……俺は君を愛してる。シワの一つさえ、愛おしいんだ」
その夜、雫音は静かに息を引き取る。世界は止まらず、時計の針は進み続けた。だが蓮の心には、彼女の時間が永遠に刻まれていた。雫音の日記にはこう綴られていた。
「私は止まった世界で生きている。でも、戻れば蓮がいる。だから、私はまだ生きていける」
蓮は空を見上げ、静かに微笑む。
「雫音……ありがとう。君の時間は、俺の永遠だ。次はもっと一緒にいられますように。」