あらすじ
舞台は奈良・平安時代。律令国家が民に重い「租・庸・調」を課し、男たちが「雑徭(ぞうよう)」や「運脚(うんきゃく)」に駆り出される時代。 農村に生きる「かか」は、寡黙な夫・太郎と三人の子供たちと共に、自然の厳しさと国家の徴収という二重の苦難に立ち向かっていた。
春の喜びも束の間、夫の不在中に幼い息子が熱に倒れ、秋には収穫した米のほとんどが役人の「測り」によって奪われていく。飢えと絶望が村を覆い、高利貸しの誘惑が忍び寄る中、かかは「ひと掴みずつの助け合い」を提案し、村の共同体としての絆――「結(ゆい)」を守り抜こうとする。
文字を読めぬ彼らにとって、記録は一本の縄だった。貸し借りも、助け合いの誓いも、すべては縄の結び目に刻まれる。冬の寒風が吹き荒れる中、運脚から帰還した太郎を迎え、家族が囲むのは薄い粥の湯気。 過酷な運命に翻弄されながらも、泥を愛し、季節を尊び、明日への希望を「結び目」に託して生きる人々の姿を描いた短編小説。