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港町で時計師をして生きている僕——ルシアン・ヴェルネには、戦争で家族を失ったこと以外、たいした話もない。 ある雨の夜、路地裏で血まみれの白い竜を拾った。それだけのことだ。 得なんて何もない。巻き込まれる理由もない。 それでも、疲れ果てた氷青の瞳から、目が離せなかった。 軍の残党が、その竜を追っている。 気づけばそれは、人の姿をしていて——記憶も名前もなかった。 ただの時計師で、英雄でも騎士でもない。 「時間は戻らない」——それだけが、僕の信条だった。でも、この子が笑うのを、初めて見た時。 何かが、ねじ巻きされた気がした。