あらすじ
世界は、音を失っていた。
誰もが眉間に皺を寄せ、呼吸の仕方さえ忘れている。
その日常の淵で、ひとりの青年は、古書店の地下で一枚の巻物を見つける。
煤けた紙には、かすれた墨でこう記されていた――
「ポコチン回天剣舞六連」。
その語を読み上げた瞬間、空気が反転する。
風は逆流し、街は沈黙し、彼の中で何かが目を覚ました。
それは祈りか、呪いか、あるいは失われた時代の記憶か。
青年はその名の意味を追い、
誰も知らぬ儀式と、封印された舞にたどり着く。
やがて彼は気づく――
世界が長い眠りのなかで封じてきた「人の心の力」とは、
悲しみと静寂をひとつに結ぶものだったと。
これは、音を失った世界に再び呼吸を取り戻すための物語。
祈りにも似た剣舞が、やがて時の鎖を断ち切る。
誰も知らぬ名が、いま静かに世界を回しはじめる。