あらすじ
唐という、巨大な虚飾が崩れようとしていた。
泥の中に生まれた男、朱温。
その胸に宿るのは、天下への野心ではない。
ただ、己の指先に触れる確かな「生」の感触と、
すべてを食い破らねば消えぬ、乾ききった飢えだった。
黄巣の乱という混沌を、男は牙を剥いて駆け抜ける。
裏切り。虐殺。そして、孤独。
恐怖こそが唯一の秩序だと信じ、
鉄の軍団を率いて、古き時代の残滓を黄河に沈めた。
宿敵・李克用。
砂漠の風を纏ったその男との死闘だけが、
朱温の凍てついた血を沸かす。
皇帝という名の空虚な玉座に座ったとき、
男の背後には、自らが撒いた絶望の影が迫っていた。
刃を突きつけたのは、血を分けた実の息子。
「やれ。泥の中へ、俺を帰してくれ」
崩壊する国の中心で、男は笑う。
一人の男が「個」を貫き、修羅として生きた、その壮絶なる軌跡。