あらすじ
戦争は終わった。けれど、人を選別する列車だけが、まだ走っている。
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終戦直後。焼け跡の町外れにある臨時駅から、時刻表にない列車が発車した。
乗客は十三人。
元通信兵、元憲兵、軍需工場の技師、闇市帰りの女、片脚を失った復員兵、教え子を戦地へ送った老教師、赤ん坊を抱いた若い母親。
だが列車が動き出した直後、車内放送が告げる。
「この車両の定員は十二名です。現在の乗客は十三名です。ひとりを降車させてください」
名前のない赤ん坊を降ろすのか。
罪を抱えた大人を降ろすのか。
それとも、生き残る価値がないと判断された誰かなのか。
列車が数えていたのは、人数だけではなかった。
名、記録、罪、帰還、そして未来。
戦争は終わった。
けれど、人を選別する列車だけが、まだ走り続けている。
誰かを犠牲にしなければ、人は本当に帰れないのか。
――
登場人物
瀬尾誠一……元通信兵。戦時中、人の名前を名簿から消す任務に関わっていた男。
高村千代……名のない赤ん坊を抱き、夫の帰還を待ち続けている若い母親。
灯……千代の赤ん坊。まだ戸籍も名前も持たなかった、十三人目の乗客。
坂巻義一……元憲兵。かつて帰還者選別資料を扱っていた冷徹な男。
倉田正造……軍需工場の元技師。列車の異常な構造に気づいていく。
三枝フミ……闇市帰りの女。米と薬を抱え、生き延びることに執着している。
宗像進……片脚を失った復員兵。戦友を置いて帰った罪を抱えている。
葛西良平……老教師。教え子たちを戦場へ送り出した過去に苦しんでいる。
車掌……終戦列車に乗る謎の存在。乗客に「一名の降車」を求める。
高村修一……千代の夫。十二号帰還枠に名を残したまま未帰還となった兵士。