あらすじ
横須賀港を臨む名門ホテル「銀鱗閣」。英国留学から帰国し、二十五歳の若さで大尉に昇進した有栖川蒼は、エリート街道を突き進む一方で、その心は虚無に支配されていた。彼の心を凍らせたのは、十五歳の時に自分から「一番大切な人」を奪った両親への憎しみ。かつて有栖川家で子守役として自分を慈しんでくれた「ねぇや」のサトは、蒼が兵学校の寄宿舎に入れられた直後、実家によって無理やり他家へ嫁がされていた。
ある日、蒼は銀鱗閣の廊下で一人の中居と衝突する。その女性こそ、十年もの間、夢にまで見たサトだった。震災で夫と子を亡くし、孤独に命を繋いでいたサトの姿に、蒼の理性が崩壊する。
かつての「坊っちゃま」としての甘えと、海軍将校としての冷徹な独占欲。蒼は彼女を自室へと連れ込み、十年の空白を埋めるように強引に、しかし執着を込めて身体を重ねる。自分以外の男を知った彼女の過去を塗り潰すように、蒼は「二度と離さない」と彼女の最奥に愛を刻みつけるのだった。