あらすじ
物心ついた時から、私の視界は暗闇だった。
檻の中で何年か過ごして、市場で売りに出されて、背の高い変な魔術師に買われた。全部終わったと思った。
なのにその人は私に名前を呼びかけ、温かいご飯を出し、「おはよう」と毎朝笑った。
私は目が見えない。でも、音を聞けば誰がどこにいるか分かるし、匂いを嗅げば誰が嘘をついているか分かる。それに、他人の目を少しだけ借りることもできる。
だから関係ないと思っていた。見えなくても、主人様の隣にいられれば、それでよかった。
ある日、家が燃えた。主人様とはぐれた。
残されたのは妹と、やたら強いお弟子様と、主人様の最後の言葉だけ。
勝たなくていいから、ちゃんと帰っておいで。
その声を最後に、私たちは走り出した。