あらすじ
灰が降る戦場で、気づいたら血まみれの剣を握っていた。
目の前には殺されたドラゴンの山。
向けられる憎悪の視線。そして「この竜殺しの悪魔め」という一言。
身に覚えがない。絶対にない。
――そんな修羅場の最中、頭に浮かんだのはミルクだった。
◆
魔法学園に入学した鴨葱焔乃士の脳内には、世界を救った伝説の英雄が六人住んでいる。
「針仕事は、道具が泣くか笑うかで決まる」
「硬えヌンチャクだァ!? 貸せやッ! 試す!!」
「骨の髄まで小市民とはこのことか」
「ノールックで首折り残酷イケメン!」
「さすが酪農変態ですわね」
「唇を重ねてくれッ!」
うるさい。全員うるさい。
あとレクターはキモい。
僕はただ、牛を育てたいだけなんだ。
しかし引いたのは最悪の「闇属性」――。
調理魔法《クック》は戦場で異様な輝きを放ち、食べた魔獣の経験をまるごと吸収する体質《還元消化》は、父が命を削って封印していた禁断の力だった。
ハクゲツの蹄煮込みを食べたあの日、すべてが一変した。
「ミルクが飲みたいだけなのに」
――食べることが、命を喰らうこと。
――死ぬ命は巡る命。
うるさくて、少しだけ切ない酪農ファンタジー。