あらすじ
弟を事故で失った研究者・朝倉紗良は、「あの瞬間だけ戻れたら」と願い続けていた。喪失から逃げるように手にしたサマルカンド行きの航空券。世界遺産の青いタイル、砂糖菓子の甘い匂い——幸福が戻りかけた刹那、博物館で“青い鈴”が落ち、紗良は西暦215年のサマルカンドへ滑落する。
彼女を導くのは、星を読む青年ラシード。未来を裂く原因は「青の写本」に欠けた一行。写本を戻せば未来は救われる。だが鈴を鳴らせば、紗良は弟に会えるかもしれない。
甘い誘惑を囁く同行者サイード、恋が育つほど増える未練、守るために嘘をつくラシード。井戸の底で突きつけられるのは——“戻りたい”よりも痛い選択。
鈴を沈めた先に残るのは、取り戻した未来と、失った名前。そして、展示札にひっそり刻まれた「あなたへ」の一文だった。