あらすじ
十八世紀、スウェーデンの博物学者リンネは、自然界を秩序づけるために“二名法”を創始した。彼の弟子ハッセルクヴィストは、ナイル川で淡水フグ〈ファハカ〉を発見し、その名を記したまま若くして没する。やがてリンネはその遺稿を回収し、“Tetraodon lineatus”として発表する――それは救済か、奪取か。
現代の大学。教授と学生、高山という院生が、この「命名事件」をめぐって激しく論じ合う。科学の秩序と支配、信仰と倫理、師弟の絆と裏切り。やがて学生は、学問の枠を超えた問いに辿り着く――「この魚を、あなたはどう呼ぶのか」。
名とは何か。真実とは誰のものか。ナイルに消えた一人の使徒の名をめぐり、過去と現在、理性と情熱が静かに交錯する知的ドラマ。