あらすじ
──大切な人を失った、すべての人へ。
「百合も喜んでるよ。」
もういない人の心を、語ってもいいのだろうか。
痛みは、慣れていくばかりで、消えることはない。
そんなふうにしか受け止められないのは、自分が子供だからなのか。
それとも、大人は痛みのない顔をしているだけなのだろうか。
大学生のモトは、ある冬の日、隣家の“お姉さん”だった百合の訃報を受け取る。
彼女が遺したのは、何気ない言葉が綴られた絵葉書と、彼女の生きた時間そのものだった。
返事を書くのをやめたのは、自分だった。理由はなかった。
けれど、その選択のあとに残ったのは、確かな後悔だった。
胸の奥に痛みを抱えたまま、モトは北の町・藻川へ向かう。
待っていたのは、不愛想な映画館の管理人・永原と、目の奥に強さを宿した女性・ミネ。
そこで交わされる言葉、照らし出される記憶。
静かな対話のなかで、モトは少しずつ、「描くこと」を通して、自分自身の痛みに触れていく。
描くように、語るように。
伝えたかったことは、胸の奥に、ずっとあった。
色が、言葉が、光ったとき――痛みと、生きていける。