あらすじ
神が零したサファイアの涙――そう称される「宝石海」は、大陸沈没の惨劇が生んだ死の海だ。その海水は通常の数千倍の密度を持ち、肺に流れ込めば内臓を宝石へと変え、生者を永遠の静止へと誘う。
王国の第三王子セレスは、かつて保身のために一人の少女をその海へ突き落とした。数年後、退屈にまどろむ彼の前に現れたのは、透明な体の中に万華鏡のような記憶を宿した、一匹の「硝子海月」だった。
その美しさに魅了された王子は、海月を特製の水槽に閉じ込め、観賞用として愛で始める。しかし、海月の透明な身を駆け巡る光の正体は、かつて王子に裏切られた少女の「肺を焼く激痛」と「剥き出しの憎悪」であった。
「綺麗ね」――無邪気な賛辞が少女の未練を猛毒へと変えていく。硝子一枚を隔てた監禁生活の果て、王子がその輝きに触れようと指を伸ばした時、宝石のように美しい地獄の幕が上がる。