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誰にも迷惑をかけず、 誰にも心配されず、 「ちゃんとしている」まま生きてきた佐伯美咲。 赤い返却箱。 署名しない同意書。 毎夜二時十七分の“覗く手順”。 彼女は少しずつ、自分を社会から切り離していく。 そして最後に残ったのは、 扉の隙間から“向こう側”を覗き続ける役割だけだった。 救われた「私」と、救われなかった「私」。 母に抱きしめられた側と、暗闇に残された側。 これは、誰にも殺されず、 誰にも責められず、 自分で自分を消していく物語。 ――最初から、そうだった。