あらすじ
宇宙航路の不具合で辿り着いた観光惑星《ルミナリア》。
天空に連なる断崖都市、環状に巡る星霊神殿、光る河と近すぎる星空。
完成された文明の中で、ユイは告げられる。
――この星では、名前は存在を固定する座標。
だが彼女の名前は不安定で、「呼ばれ続けると、逆に消える」欠陥を持っていた。
保護を任されたのは、異星文明の守護公爵レイ=アルト。
無口で合理主義、感情を表に出さない男。
彼が選んだ最適解はただひとつ――ユイの名前を呼ばないこと。
代わりに灯りを置き、鈴の音で合図を送り、食事と夜の散歩で存在を確かめる日々。
呼ばれないのに、確かに大切にされていると分かる距離。
だが期限の終わりが近づくと、
「最後に一度だけ、正式な座標固定が必要だ」と告げられる。
――それは、彼が初めて彼女の名前を呼ぶという意味だった。
(全8話)