あらすじ
『赤いブレーキランプ』あらすじ
大阪府堺市――。
南海電鉄の不動産営業部で働く佐藤祥子は、夫・幸弘と三人の子どもたちに囲まれ、ごく普通の毎日を送っていた。
夫の幸弘は南海電鉄の乗務員。安全を第一に、多くの乗客の命を預かる仕事に誇りを持ちながら働いている。
一方、堺市から泉大津の臨海工業地帯へ通う化学メーカー営業部長・下田孝介もまた、妻・恵子と二人の子どもを持つ“普通の父親”だった。
しかし孝介は、仕事の重圧や苛立ちを、次第に運転へぶつけるようになっていく。
渋滞。
割り込み。
前を走る車への不満。
「急いでるんや」
「ちんたら走るほうが悪い」
その小さな怒りは、家族の制止も聞かず、少しずつ危険な運転へ変わっていく。
そして、運命の日――。
仕事帰りの祥子は、ガソリンスタンドから道路へ合流する。
十分な車間を確認した、何の問題もない合流だった。
だが、自分の前に入られたと感じた孝介は激昂。
執拗な煽り運転の末、片側一車線の左カーブで祥子の車を強制停車させる。
怒鳴りながら車へ詰め寄る孝介。
その直後――
後方から走行してきた大型ダンプが、停車車両を避けきれず追突。
祥子の車は前後から押し潰され、運転席は原形を留めないほど破壊される。
搬送から一時間後、祥子の死亡が確認された。
突然、母を失った子どもたち。
妻を失い、乗務から外された幸弘。
“加害者の家族”として崩壊していく下田家。
そして、事故ではなく「危険運転致死」として進む刑事裁判。
法廷では、ドラレコ映像に残された祥子の最後の声が再生される。
「これは事故なのか」
「怒りを理由に、人はどこまで他人の人生を壊せるのか」
「法律や社会は、本当に命を守れているのか」
残された家族は問い続ける。
やがて事件は、交通安全教育や道徳教材、交通刑務所での上映にも使われる社会的作品へと発展していく。
これは、
“ほんの数秒の怒り”が、どれほど多くの人生を壊すのかを描いた物語。
そして――
「それでもあなたは、煽り運転をしますか?」
と、社会全体へ問いかける物語である。