あらすじ
京都市で暮らす四十代主婦・Aは、主婦友やブログ仲間から「シンプル志向の人」と認められる存在。物は増やさず、あるもので回し、丁寧に暮らすことを信条としている。近畿大学卒業後に結婚し、二児の母となった今も、その“ちょうどいい生活”に自負を持っていた。
そんな彼女が所有する小さなアパートに、ある春、京都大学医学部の女子学生Bが入居してくる。
理路整然としていて、シンプルで、オーソドックス。けれどどこか独自な視点を持つBは、「自分の目で判断する」という哲学を貫く少し変わった京大生だった。
映画論のレポートに込められた“削ることで本質を浮かび上がらせる”思想。
理論で味噌汁を再現しようとして失敗する不器用さ。
そして、流行に流されず、自分で選ぶという覚悟。
生活の知恵で生きてきた主婦Aは、知性で世界を読み解くBに静かに驚かされる。だが同時に、Bもまた、数値化できない日々の営みに心を動かされていく。
シンプルとは何か。
それは物の少なさか、理論の明快さか、それとも——。
世代も立場も違う二人の女性が出会い、それぞれの“シンプル”を見つめ直す、静かであたたかな知的交流物語。