あらすじ
忘れないことは、救いか。作り直すことは、愛か。
春日リョウには、忘れてはいけない恋人がいた。
椎名アスカ。
同じ学校に通い、同じ時間を過ごし、確かに隣にいたはずの少女。
けれどある日、彼女は世界から消えた。
写真から姿が消え、教室から席が消え、友人たちの記憶から名前が消えていく。
誰もアスカを覚えていない。
彼女が存在した証拠は、ひとつずつ塗り替えられていく。
それでもリョウだけは覚えていた。
彼女の声を。笑い方を。泣きそうな横顔を。
そして、彼女が最後に残した違和感を。
やがてリョウは、学校に潜む怪異《ファントム・ミラー》と、失われた存在を記録する者たちの影に触れていく。
鏡の向こう、書き換えられた世界、誰かの代わりとして配置された少女、そしてアスカの欠片を抱えた無数の個人世界。
アスカを取り戻したい。
ただそれだけの願いは、やがて世界そのものを書き換える危険な執着へ変わっていく。
消えた恋人を救うことは、本当に彼女を救うことなのか。
忘れないことと、作り直すことは同じなのか。
これは、存在を奪われた少女と、彼女を忘れられなかった少年が、鏡の奥で世界の輪郭に触れる物語。