あらすじ
その列車は、時刻表にはない。終点は黄泉、運賃は『一番大切な記憶』
「僕が切符を切ったのは、他人の未練だと思っていた。……じいちゃん、これ、僕たちの時間だったんだね」
就職活動に敗れ、逃げるように帰省した尾道の坂道で、天城駆(あまぎ かける)は奇妙な「黒いトランク」と、行き先の書かれていない「片道切符」を拾う。 導かれた先は、霧に包まれた尾道駅の『0番線』。そこに待っていたのは、旧国鉄色の怪しげな夜行列車と、猫耳を隠した不遜な少女車掌・ニコレだった。
駆は「見習い車掌」として、現世に迷い込んだ人ならざる乗客――「神客(かみきゃく)」たちを送り届ける旅に出る 。 伯備線の渓谷に潜む濡れ女 、布原の霧に現れるD51三重連の亡霊 。 特殊スキル《遺失物鑑定(ロスト・アイデンティティ)》を駆使し、神客たちの抱える「忘れ物(未練)」を解決していく駆だったが、旅の終着点・黄泉比良坂(よもつひらさか)で、彼はこの列車に隠されたあまりにも切ない『真実』を知ることになる―― 。
中国地方を舞台に、実在の鉄路(伯備・芸備・木次線)と神話的世界が交錯する。「喪失」から始まり、広島・宮島を巡る旅路の果てに「再生」を見出す、異界鉄道ファンタジー、出発進行。