あらすじ
深夜のコンビニで働く「僕」は、
ある雨上がりの夜、
誰も通っていないのに開く自動ドアを目撃する。
防犯カメラにも映らず、
痕跡も残らず、
ただ“店のどこかが減った”ような違和感だけが残った。
そんなとき現れたのは、
街の噂で“ノイズを読む男”と呼ばれる青年・橋屋つるぎ。
彼は店内を一瞥するなり、
こう言った。
「温度が抜かれとる」
それは幽霊でも超常現象でもない。
つるぎによれば──
“ある職業の人間”だけが見せる、異常な行動の末路だった。
奪われたのは金品ではなく、
存在そのものの温度(ぬくもり)。
そして“消えたはずの誰か”は、
最後に僕の肩に触れていたらしい。
犯人は死んでいない。
だがすでに“世界から消えている”。
残されたのは、
店外の壁にわずかに残った ひとつの温もり。
それは何を意味していたのか。
なぜその人は痕跡を消したのか。
そしてなぜ最後に僕に触れたのか──。
心霊にも見えるのに、すべては人間の行動で説明できる。
静かな夜に紛れた、ひとりの“消えた人間”の物語。
読後、そっと暖房を上げたくなるような、
温度のミステリ短編。