あらすじ
木星外縁から届いた信号は、素数列だった。
人類は歓喜した――宇宙に知性がいる。
だが、最初の会話で躓いた。
足し算が通じなかったのだ。
「二つの丸と三つの丸を合わせると五つです」
「合流前後で、なぜそれらは同種の対象として追跡されるのですか」
掛け算も、割り算も、通じない。
相手が未熟なのではない。
人類の側が、自分たちの数学の「前提」を説明できていなかった。
やがて人類は知る。
彼らの世界には、数えられる「物」がそもそも存在しなかったことを。
素数が、彼らには子どもの数え歌ではなく「寺院」に見えていたことを。
これは、互いの数学の根を失いながら、
それでも壊し合わずに出会おうとした、十二年の記録である。