あらすじ
影妃(えいひ)──それは、王の魔力を循環させるためだけに作られた“身代わりの妃”。
背に偽りの花紋を刻まれ、一生続く激痛とともに役目を終えれば処刑される、捨て駒の存在。
その影妃に選ばれた少女レイシアは、かつて貧民窟で“灰”と呼ばれ、名すら持たず焼き殺されかけた身だった。
だが彼女には、だれにも真似できない一つの才があった。
── この国のどんな神官よりも正確に“象(かたち)”を読み、
崩れた運命の流れを繋ぎ直す力。
王ゼクスは、彼女を政治の駒として利用しようとするが、彼女の才覚を認めざるを得なかった。
反目しながらも、ふたりは次第に惹かれあ合う。
大鯨が漂着し、王国に滅びの凶兆が満ちたとき、
レイシアは死を覚悟して王の前に進み出る。
「大鯨は災いではありません。
──国を救う“恵み”に変えられます」
影妃が王に献じた策は、やがて王都の経済を動かし、政局を揺るがしていく。
だがその裏で、影妃制度の真実がレイシアに迫る。
「影妃は、役目を終えれば必ず殺される」
彼女を救おうと激しく揺れる王ゼクス。
冬至点の祭祀の夜、惹かれあうふたりは思いがけず互いのからだを重ねてしまう。
彼を支える軍師オルフェンは、影妃を王から切り離そうと暗躍する。
さらに“神に選ばれし白子(アルビノ)”ラスは、レイシアの身に宿る“もうひとつの運命”を聞き取ってしまう。
運命の一夜が、それぞれの宿命の歯車を狂わせる。
これは、
たった一つの花紋を背負わされた少女が、
王国の運命を捻じ曲げ、
権力と神話の中心へ駆け上がる物語。
影妃は捨て駒では終わらない。
影妃は──王と国を救う唯一の鍵だった。