あらすじ
それはむかしむかし、ここでない場所のお話。
ヤギのお母さんが七匹の子ヤギと仲良く暮らしておりました。
ある日、お母さんヤギは山菜を採りにお出かけします。
「いい? 知らないひとが訪ねてきても、決して扉を開けてはなりませんよ?」
お母さんヤギの言いつけにうなずき、七匹の子ヤギはお留守番です。
太陽が真上に昇り、子ヤギたちがお腹を空かせたころ、コンコンと玄関を叩く音がします。「お母さんだ!」と喜ぶ弟たちを制し、お兄さんヤギがそっと覗き窓から外を覗くと――
「狼だ!」
子ヤギたちは身を寄せ合い、恐ろしさに震えます。
「怖いね」
「怖いよ」
泣きそうになる弟たちの肩を抱き、
「……でも」
長兄は確固たる決意を以て皆に告げる。
「我らが真に怖るべきは、お方様のお命のみよ」
これは、乱世に呑まれ隠れ住む一人の女性と、
彼女を守るために命を燃やした七人の武士の物語。
童話の影に隠された、峻烈なる“七匹の子ヤギ”異聞。