あらすじ
ダンジョンに出会ってからなぜか危機のたびに“別の世界の記憶”が増えていく。
ダンジョンが駅にできた日も、私は出社するつもりだった。
本当は電車が止まればいいと、少しだけ思ったけれど。
けれど結局、いつも通り改札をくぐった。
そういう人間だ。
人前に出るのが苦手な、取り柄のない中年会社員。
その朝、通勤途中の駅に発生したダンジョンに巻き込まれた。
特別な才能はない。戦闘力も高くない。
あるのは、危機のたびに“他人の記憶”が増えていくことだけ。
それは、ダンジョンが社会に組み込まれた世界で
さまざまな職を渡り歩いた人生の記憶だった。
なぜか私も、その記憶をなぞるように
ダンジョンに関わる仕事へと流されていく。
逃げたい。だが生活は待ってくれない。
だからまた地下へ向かう。
正しいかどうかもわからないまま。
平凡な男の選択は、やがてダンジョン社会の歪みを少しずつ変えていく。
――私にそんなつもりはない。
これは、無双しない男の、生存と影響の話。