あらすじ
膠原病と診断され、教師としての未来も婚約者との生活も手放した水野なつきは、六人部屋の病室で生きる意味を見失っていた。
隣のベッドに入院してきた元絵本作家・島田健吾は、毎朝の景色をスケッチしながら「同じ日なんて一日もない」と語る。二人は絵本「小さな種の冒険」の制作を通じて心を通わせ、病室は小さな創作の工房へ変わっていく。だが完成を目前に島田は急逝し、なつきは再び深い喪失に沈む。残されたのはスケッチブックと、絵本の続きを託す手紙だけだった。島田の遺志に応えるため、なつきは物語のラストを自ら書き上げる。病気と共に生きること、変わり続ける景色を受け入れること。そして失った後にもなお残るものを信じること。絵本の完成は、なつきが「再び生きる」ための第一歩となる。