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戦国の港町・堺。 南蛮船が出入りし、鉄砲や砂糖、香辛料が運び込まれるこの町は、武士ではなく商人たちが自治を握る自由都市でした。 茶商・今井宗久は、会合衆のひとりとして港の関税と倉庫の鍵を預かり、茶道具の目利きと算盤を武器に乱世を渡っていきます。 夫である宗久を支えるのは、帳簿と現場の両方を預かる妻・お槇。茶室と港、茶碗と砂糖袋、そのあいだで揺れながら「町と人の生活を守ること」と「利を逃さないこと」の両立を探っています。 織田信長・豊臣秀吉・千利休といった武将や茶人たちが、港と茶室を通じて交差していくなか、 小さな一碗の茶と一本の算盤が、いつしか天下と港の命運を左右していく――。 茶の香りと商いの匂いが混じる戦国の堺を、商人夫婦の目線から描く歴史小説です。
芥川城に献上された名物・九十九髪茄子。 その飴色の光は、信長の“冬の美学”と、若き宗春の“春の感性”を同時に揺り動かした。 静けさの底にこそ力が宿る──信長はその光を“測り”、天下を動かす器として見抜く。 宗春は未分化の感性でその気配を受け取り、初めて「静けさ」と言葉にする。 この価値観は利休へ受け継がれ、やがて秀吉の“夏の光”と衝突する。 北野大茶湯を境に、利休の沈黙は深まり、秀吉の光は孤独を増し、二人の価値は静かにすれ違っていく。 三年半の沈黙ののち、利休は大坂城で切腹を命じられ、“美の死”が訪れる。 宗春は、その変質を唯一観測できる存在だった。 信長の冬、秀吉の夏、利休の秋── そして宗春の胸にだけ残った“深さ”。 価値の誕生と死を描く、静かで深い歴史物語。