あらすじ
森の恵みで生きる辺境の村で、青年リオルは薪と材木を売って暮らしていた。
彼の使う植物魔法は、花を咲かせる華やかな力ではない。木を育て、薪に向く木、橋に使える木、家を支える材木へと育て分ける、地味で実用的な力だった。
無口で愛想もなく、ただ必要な分を切り、運び、直すだけ。本人に英雄願望などない。冬を越せるだけの火があり、雨風をしのげる家があり、橋が落ちず、暮らしが続けばそれでいい――リオルは、ただそう思っているだけだった。
だが、冷え込みの早い年。薪不足、老朽化した橋、滞る物資、迫る領境の不穏。
村を守るための木は、やがて柵となり、橋となり、砦となり、兵站を支える柱となっていく。
生活を守るために重ねた判断は、いつしか戦場の勝敗すら左右し、
人々は彼をこう呼び始める。
――樹冠の軍師、と。
これは、薪を売っていただけの青年が、木と暮らしを守り続けた果てに、王国の戦を変えてしまう物語。