あらすじ
砂漠の真ん中で目を覚ました十三人。
水も食料も足りない。
空には衛星ドローン。
手首には黒いバンド。
足元の白い砂には、こう刻まれていた。
殺せば奪える。
誰かが死ねば、水と食料と日陰が増える。
直接殺さなくても、見捨てれば、後回しにすれば、砂漠はその死を数値化する。
だが十三人は、無作為に集められたわけではなかった。
彼らは全員、三年前の白砂火災事故で、誰かを救えなかった者たちだった。
誰か一人を選べば、全員が助かる。
それでも彼らは、最後にこう答える。
誰も、最後の一人にはならない。
――
登場人物
白瀬透:警備会社で働く青年。過去に駅で倒れた男性を助けられなかった記憶を抱えている。
砂堂ましろ:救命講習を重ねてきた女子高校生。母を救えなかった過去から、人を助けることに執着している。
橘真紀:二十八歳の男性教師。生徒のSOSを見逃した後悔を抱え、砂漠でも大人として振る舞おうとする。
氷室怜:データ解析職の男。災害避難AIの評価に関わった過去を持ち、砂漠のシステムを読み解く。
久我隼人:配送業の青年。乱暴に見えるが、過去に妹を救うため別の子供を置き去りにした罪を抱える。
黒瀬遥:弁護士。白砂火災の遺族の訴えを途中で諦めた過去があり、今度こそ記録を外へ持ち出そうとする。
篠田和彦:保険会社の担当者。最初の死によって水を得てしまい、孤立していく男。
御厨壮太:大学生。死者の水を奪った罪悪感と生存本能の間で壊れていく青年。
三枝莉子:火災当時、施設内でアルバイトをしていた女性。体力を失いながらも生きて戻ろうとする。
鳴海修:最初に命を落とす男。彼の死によって、「殺せば奪える」ルールが現実になる。
佐伯絹江:水を与えられなかったことで命を落とす高齢女性。見殺しも罪として数えられることを示す存在。
相原由美:砂嵐の中で消える女性。助けるか、守るかの選択を透たちに突きつける。
椎名吾郎:医療を選ばれなかったことで命を落とす老人。善意も結果で測られる砂漠の残酷さを示す。