あらすじ
人間の記憶を“ロット”として売り買いできる近未来。
都市の地下にある〈記憶オークション〉は、過去を手放したい人間と、他人の体験を集めたい物好きたちが集うグレーゾーンだ。
生活費と借金返済のために、自分の記憶を少しずつ切り売りしている男・忘井 記(わすれい き)は、ある夜、場末のロットに妙な引っかかりを覚える。
「ある人物の最後の一日」とだけ題された安物の記憶カプセル。
軽い気持ちでインストールした瞬間、彼の脳裏には、知らないはずの病棟、白い廊下、消えた誰かの声が鮮烈な既視感として押し寄せる。
記憶オークションのブローカー・鹿目ルカ、記の過去の記憶を集める謎のコレクター・御影圭一郎。
彼らとの会話に揉まれながら、記は「売ったはずの自分」と「買ってしまった他人の過去」の境界を見失っていく。
やがてオークションに姿を現す一つのロット。
〈忘井 記・全人生バックアップ〉
過去を売り払った男は、自分自身を競り落とすのか。それとも、物語ごと手放してしまうのか。