あらすじ
VR戦略シミュレーション《エクリプス・オンライン》にログインした高校生・如月蓮は、わずか三時間後に現実へ戻ってきた。
だが、蓮の体内には七年分の戦場が残っていた。硝煙と泥の記憶、仲間の死、引き金の感触――そして、平和な街で鳴る自転車のベルにさえ伏せてしまう「帰還兵」の反射。
日常は異界になる。コンビニの光が痛い。人の笑い声が遠い。そんな夜、蓮は街の暗がりに“死の気配”をまとった白髪の男を見る。ゲーム内で暗躍していた兄・如月レイに酷似した影だった。
追っても掴めない兄の背中。混乱の中で蓮の視界に、狙撃用レティクルが一瞬だけ浮かび上がる。さらに右手は壁を砕くほどの力を宿し、ゲームの能力が現実へ漏れ出していると知る。
同時刻、新宿で原因不明の爆発事故が発生する。蓮が感じた冷たい圧と、銀色の光。点だった異変が線で結ばれ、蓮は理解する――戦場は終わっていない。《エクリプス・オンライン》の“向こう側”が、現実へ侵食を始めている。
失った仲間の生存を確かめるため、そして兄レイの真意を突き止めるため、蓮は再び歩き出す。ログアウトの先に待つのは、平和ではなく現実そのものの再侵攻だった。