あらすじ
奨励会に入って十年。
二十二歳の僕は、いまだ初段のままだった。
プロ棋士になるためには、厳しい昇段と年齢制限を越えなければならない。例会は月に二度、わずか四局。三勝一敗以上でなければ前進できない世界で、僕の成績は二勝七敗。次の対局に負ければ降級し、将棋の道を諦めなければならない。
孤独な一人暮らしの夜、僕は詰将棋の本を持って草原へ向かう。
北海道の故郷を思い出すその場所で、人生のように複雑な問題と向き合いながら、僕は神様に問いかける。
――どうすればいい?
詰将棋にはいくつもの分岐がある。
けれど僕の人生には、もう次の一手が残されていないのかもしれない。
静かな夜のなか、僕は詰将棋の本を閉じる。
それは、将棋に捧げてきた人生に別れを告げる音だった。