あらすじ
夜のオフィスで行われた残業会議の後、同僚の高城が会議室で死亡しているのが発見される。
会議室は内側から施錠され、窓は開かず、出入口は一つ。防犯カメラも廊下しか映しておらず、状況は完全な密室だった。
当夜、会議室にいたのは四人。
高城を残し、他の三人は順に部屋を出たと証言する。
語り手である「私」もまた、警察の事情聴取に対し、事実だけを淡々と語る。
「私は、最後に会議室を出た人間を見ています」
その証言は嘘ではなく、警察も同僚たちも疑念を抱かない。
第三者の侵入は不可能と判断され、事件性は低いとして処理される。
しかし、語り手の内面では、小さな違和感が静かに残り続けていた。
誰も、語り手がいつ部屋を出たのかを確認していない。
誰も、悲鳴を聞いた場所を問い直していない。
そして誰も、「最後に部屋を出た人間」という言葉の意味を深く考えなかった。
物語は、語り手の記憶を辿ることで、少しずつ別の輪郭を帯びていく。
会議室で見た光景。
背を向けた高城。
閉じられた扉と、鍵の音。
密室の謎が解かれたとき、
「最後に部屋を出たのは誰か」という問いは、
まったく異なる意味を持ちはじめる。