あらすじ
かつて“英雄”と呼ばれた男は、今は闇に生きる泥棒だ。
元特殊部隊工作員セイ。国家のために汚れ仕事を担い、そして切り捨てられた男。
ある夜、彼の前に一人の少女が現れる。ミラ――殉職した相棒の娘。
「父は、あなたを信じていた」
だがセイは知っている。あの任務の夜、自分は救出よりも作戦成功を選んだ。
相棒は国家に裏切られ、そして自分にも見捨てられた。
ミラが父の遺品から見つけ出した暗号化データ。
セイが盗み出した極秘資料。
二つが繋がったとき、浮かび上がるのは国家中枢と特殊作戦司令官による裏取引――
優秀すぎる工作員を“事故死”として処理する冷酷な粛清計画だった。
真実を暴けば国家を敵に回す。
沈黙すれば父の名は永遠に汚されたまま。
衝突しながらも共闘する二人。
そしてついに、全証拠が揃う。
雨の倉庫。
銃口の先に立つ司令官。
「生きていたのか」
「残念だったな」
引き金にかけた指。
だがその瞬間、テレビに流れる速報。
――匿名の内部資料が公開。国家の不正が暴露。
ミラが先に撃ったのだ。
銃ではなく、真実で。
復讐は奪われ、司令官は法廷へ。
裁判は国家を揺るがす一大スキャンダルとなり、世論は沸騰する。
やがて有罪判決。国家は不当作戦を認め、異例の声明を出す。
だがセイに与えられたのは栄誉ではない。
届いた封書には――恩赦、そして身分抹消。
英雄にも悪にもならない。
存在しなかった者として歴史から消える処分。
「あなたは任務を選んだ。でも父は、あなたを選んだのよ」
ミラの言葉が、灰となった心に灯を落とす。
数年後。
彼女は暗号学を学び、国家を動かす“数式の戦場”へ。
彼は名を変え、壊れた絵を修復する職人として生きる。
罪は消えない。
過去も消えない。
それでも――
守る理由がある限り、男は引き金を引かない。
これは、
国家に裏切られた工作員と、真実を撃ち抜いた少女の
再生と贖罪のクライム・サスペンス。
英雄を殺すのは敵ではない。
国家だ。