あらすじ
「私はもう走れない。でも、君が押してくれたら、どこにだって行ける気がするよ」
かつてサッカー部のエースとして、誰よりも速くグラウンドを駆け抜けていた高校三年生・朝霧陸(あさぎり りく)。
しかし、中学二年の冬に遭った交通事故ですべてが一変する。母親を亡くし、自身も脚に大怪我を負った陸は、必死のリハビリの末に復学を果たすも、周囲の憐れみの視線と、体育祭で浴びた無神経な笑い声に心を折られ、暗い部屋で引きこもり生活を送っていた。
そんな陸の前に現れたのは、学校のプリントを届けにきたクラスメイトの夏川澪(なつかわ みお)。
ズカズカと部屋に踏み込んでくる、太陽のように明るい彼女が苦手だった。だが澪のその明るさは、かつて中学の体育祭で、転んだ自分に手を差し伸べてくれた陸への「憧れ」から作られたものだったのだ。
「また来るね」
そう言って笑った帰り道――澪はトラックに跳ねられ、二度と歩けない身体になってしまう。
壊れていく大切な人を直視できず、一度は逃げ出そうとした陸。しかし、同じように暗闇の中で時間を止めていた父親の涙を見たとき、陸は再び、外の世界へと一歩を踏み出す決意をする。
これは、かつて誰よりも速く走れた少年と、少年に憧れて前を向いた少女が、互いの傷を抱えながら、不格好に、けれど確かに未来へと歩みを進めていく、再生の物語。