あらすじ
王城の茶会で毒物混入の濡れ衣を着せられた公爵令嬢セシリアは、父にまで切り捨てられたその場で、家名からの離脱を宣言する。悪役令嬢として処分される代わりに、自分の足で王都を去った彼女が流れ着いたのは、寒さと貧しさに苦しむ北の辺境・白梢の谷だった。
そこで出会ったのは、魔導タイプライターで契約や記録を成立させる打鍵術師ネマーニャ。無口だが誠実な彼に支えられ、セシリアは空っぽの倉庫を食堂へ変え、母から受け継いだ料理で人々の心と身体を少しだけ強くする“料理の祝福”を振る舞い始める。飢えた子ども、居場所を失った獣人、借金を抱えた荷運び頭、王都で傷ついた職人たち。行き場をなくした人々が鍋を囲むたび、白梢の谷はただ生き延びる土地から、帰りたくなる町へ変わっていく。
だが、辺境が豊かになるほど、セシリアを切り捨てた王都の貴族たちは土地も人も奪おうと手を伸ばしてくる。偽の救援物資、改ざんされた契約書、父との再対決、王前審理。過去に縛られた名前を捨てたセシリアは、今度こそ自分で選んだ居場所を守るため立ち上がる。
これは、誰かに与えられた役ではなく、自分で選んだ働き方と愛し方で人生をやり直す物語。温かな食卓と町づくりの先で、元悪役令嬢は新しい名と新しい幸せを手に入れていく。