あらすじ
「この顔さえなければ」
美貌ゆえに人形扱いされてきたリゼットは、魔女から老婆の皮を授かり、すべてを捨てて逃げ出した。
辿り着いた雪国で出会ったのは、孤独な侯爵アレクセイ。彼は「氷の侯爵」と恐れられながら、誰にも本音を見せられずにいた。けれど老婆マーサの前でだけ、彼は鎧を脱いだ。
「お前の手は温かいな」
その言葉が、リゼットの凍えた心を溶かしていく。
――でも、彼が心を許しているのは「老婆の私」。
――けれど、彼が恋焦がれているのは「美しい私」。
本当の私は、どこにもいない。
すべてが暴かれる日、リゼットは自ら皮を脱ぎ捨てた。
彼の名誉を守るために。もう隠さないために。
「中身が同じだったからだ。俺が好きになった心と、惹かれた魂は、最初から一つだった」
――ああ、この人は最初から、ちゃんと見ていてくれたんだ。