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「英雄」と呼ばれたのは、もう遠い昔の話だ。 左遷された元英雄――ベルネ・クラウス。 かつて革命戦争で魔導部隊を率い、幾度もの戦いを勝利へ導いた中佐。 だが、政争の渦中で「平和を望む」というその性格は、 いつしか味方の中で浮いていた。 三ヶ月前、共和国の命令により北方都市アルトレーンへ派遣される。 名目は“北方駐屯地の軍事調整”。 実際は、都合の悪い英雄を静かに追いやるための人事だった。 凍てつく雪の街。 かつての戦火も歓声も、ここにはない。 ベルネは、与えられた職務をこなしながら、 「もう戦わない平和」を受け入れようとしていた。 だが、その北方では魔導炉の異変が相次ぎ、 街の均衡が少しずつ崩れ始めていた。 やがて、中央から派遣された“技術顧問”を名乗る少女が現れる。 年齢も経歴も定かでないその少女の登場が、 忘れられた英雄の静かな日々を――再び動かしていく。 戦うことをやめたこの世界で、何を信じ、何を守るのか。 それは、誰かの理想ではなく―― ただ、自分の信じる“平和”を取り戻すための戦いだった。
黒死病が娘を奪った日、木工職人ギデオンは深い絶望の底へ落ちた。 彼は毎晩、奇跡を願いながら祈り続けた。 そして――月が欠けた夜、天から光が降りそそぎ、 木は泣き、命を得た。 こうして生まれたのがピノネラ。 “借り物の魂”を宿し、愛も痛みも感じる木の少女。 しかし王国では、「獣の彫刻師」と呼ばれる闇の魔導師が子供たちをさらい、 人間の魂を残したまま、ロバへと変えて ダイヤ鉱山の奴隷として働かせていた。 ピノネラは、変えられた子供たちがまだ“人間として泣いている”ことを知る。 彼女は決意する。 ――彼らを救うため、自らの命を賭けて闇に立ち向かうことを。 その小さな木の少女の犠牲が、 やがて世界の運命を大きく変えていく。