あらすじ
王太子エリアスとの婚約を、百人の貴族の前で一方的に破棄された侯爵令嬢リディア。
理由は「国家への裏切り」――ありもしない罪。
嘲笑と沈黙の中、彼女はただ一言、「お幸せに」と言い残して広間を去った。
追放先は北境グレイン領。
冷徹と噂される“氷の辺境伯”ヴァルターとの、
干渉禁止の契約婚から物語は始まる。
帳簿と印章、偽造と密告。
冷たい数字の中で、リディアは失われた真実を記録し直していく。
沈黙が罰だと思っていた彼女は、やがて知る――
沈黙こそ、最も雄弁な証明であると。
やがて王都で再審が開かれ、
笑って彼女を見下した者たちが、今度は沈黙する番となる。
遅れて届いた一通の手紙とともに、
春の館に、二人分の椅子が並ぶ――。