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父は、少し変わっている。 エスカレーターでは必ず斜め後ろに立つし、 背後に人が来るのを嫌がる。 街に出れば、やたらと周囲を見渡す。 娘の私は、それをずっと「ダサい」と思っていた。 早く家を出たい、と本気で考えるくらいに。 けれどある日、 日常は音もなく裏返る。 銃声。 血の匂い。 そして、味噌汁の残り香。 あの癖も、あの距離も、あの沈黙も。 全部に意味があったと知るのは、 いつも、少し遅い。 これは、 娘が初めて父の背中に追いつくまでの物語。