あらすじ
明治四十三年、遠野。
死者の声を聞く能力を持つ巫女・遠野千鶴は、日露戦争以降、彷徨える魂が増え続けていることに気づく。座敷わらしは姿を消し、山神は怒り、戦死者たちは故郷に帰れず彷徨っている。
そこへ東京から訪れたのが、民俗学を学ぶ青年・水木蒼一郎。戦死した兄の魂を探す彼は、怪異を恐れながらも、千鶴に導かれて生と死の境界を巡る旅に出る。
なぜ人間は戦争をするのか。
なぜ死者は安らげないのか。
魂の救済とはいったい何か。
二人が出会う座敷わらし、山神、彷徨える兵士たち。それぞれの魂が抱える想いを知るうちに、蒼一郎は人間だけが持つ「死を認識し、悼む能力」の深淵に触れていく。
明治から大正へ。時代が変わろうとする中、千鶴と蒼一郎は問い続ける――。
「人間とは何か。死とは何か。そして、いかに死者と共に生きるか」
これは遠野の霧に包まれた、生と死の境界の物語。