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これは、討たれることを拒んで消えていった、名もなき鬼の話だ。 鬼は、討たれて物語に固定されることでしか、永遠を得られない。 酒呑童子も、茨木童子も、鬼ヶ島の鬼たちも、そうして永遠になった。 討たれることは、鬼にとって誉れであり、悲願だった。 ただ一匹だけ、討たれたくない鬼がいた。 ひとつの役に縛られるより、何者でもないまま消えたい。 そうして、その鬼は誰にも知られず消えていった。 ——だから本来、この話は、誰にも語られないはずだった。