あらすじ
ハイエルフ王家第1王女セレスティア・リュミエール・アルヴァレインは、五歳の春、前世の記憶を思い出す。
前世の彼女は人間の公爵令嬢にして、王国最強と謳われた剣聖セレスティア。
背にはアダマンタイトの大剣「黒星」。
左腰にはオリハルコンの両手剣「閃白」。
その二振りを携え、邪神に挑んだ女だった。
エルフは輪廻の輪に生きる種族。
前世の記憶を持つこと自体は不思議ではない。
だが、白樹の森の王女が思い出したのは、優雅な姫君の記憶ではなく、剣と戦場に生きた剣聖の記憶だった。
セレスティアは王女として礼法、魔法、精霊術を学びながら、不完全な前世の記憶を頼りに剣を振り続ける。
そしてハイエルフの身体と魔力制御を得た彼女の剣は、前世の剣聖をなぞるだけでなく、かつての自分を超える領域へと届き始めていた。
十八歳の春。
セレスティアは白樹の森を出る。
向かう先は、ドワーフの鍛冶町グランガルド。
目的はただ一つ。
前世の愛剣「黒星」と「閃白」を打った老鍛冶師ゴルド・ガルガンドに、今生の自分のための二振りを造ってもらうこと。
かつて邪神に挑む前、前世のセレスティアはゴルドに告げていた。
もし死んでしまったなら、輪廻転生して必ず戻り、もう一度「黒星」と「閃白」を造ってほしいと頼みに来る、と。
そして五十一年後。
剣聖の死から剣を打つことをやめ、笑うことすら忘れていたドワーフ一の鍛冶師の前に、ハイエルフの王女としてセレスティアは現れる。
「黒星と閃白を、もう一度造ってくださいませ」
これは、前世の剣聖がただ生まれ変わる物語ではない。
ハイエルフ王女セレスティアが、前世の自分を超え、失われた約束を果たし、世界に再び剣聖の名を刻む旅の物語である。