あらすじ
世界は三つの大国と無数の小勢力が火種を抱えていた。
どの国も争いに正義を語り、どの国も誰かの敵になる。
――そんな世界で唯一、“どこの味方でもない”組織がある。
無章の渡来人。
国境を越え、宗教も政治も超えて、ただ《手紙》だけを届ける中立の配達者。
その一人が、少女 ノア だった。
危険地帯への入国。
匿名の依頼主。
差出人の生死すら分からない手紙。
政治の陰に生まれる偽造と監視。
そして、届けた瞬間に“意味”を持ってしまう文。
「私は、何を運んでいるんだろう……」
任務をこなすたび、ノアの胸には“中立でいることの重さ”と“選べない立場”が積もっていく。
だが、それでも彼女は文を抱える。
戦争の国へ。弾圧の国へ。光の国へ。
《境の狭間》を渡り歩きながら。
これは――
争う世界の“すきま”に立たされた少女が、
手紙と共に揺れ続ける記録。
届けばいい。
正しいかなんて、分からなくていい。
彼女は今日も、境界を越える。