あらすじ
【キャッチコピー】
火を見ろ。色が違う。――そう囁いたのは、窯か、世界か。
「現場の男」が、世界を焼き直す。
【あらすじ】
町工場で深夜の還元焼成を任される桐生颯太、三十二歳。研究員でも管理職でもない、ただの窯焚き作業員である。学歴もなく、腕一本で炉の機嫌を読んできた男。その日もまた、彼は炎の前で世界から忘れられたように一人立っていた。爆発音、視界を覆う白い光――気がつくと、颯太は剣と魔法の大陸、辺境の小村に倒れていた。
魔王と呼ばれる存在が大地を蝕み、世界を支える「古代の封印壺」が崩れ始めた異界。失われた古代窯業の継承者を、炎神は探していた。颯太は知らない。自分が毎日扱っていた「還元焼成」という、誰も振り向かない地味な技術が、二つの世界を救う鍵であることを。そして、敵国・帝都の帷幄に潜む黒衣の魔導士が、工場でいつも自分を踏みつけていた、あの男であることを。
土を練り、釉を掛け、薪をくべる。学のない一介の作業者が、二つの世界を「還す」物語が、いま始まる。