あらすじ
人が空を見上げても、もう星はほとんど見えなくなった。
都市の光と人工衛星の軌道が、夜空を覆っているからだ。
吉村陸、三十八歳。
エネルギー企業のシステム保守員。
AIが仕事を判断し、感情が不要になった時代に、
彼はただ“見ているだけ”の日々を生きていた。
恋人を裏切りで失い、
唯一の家族だった猫・コマキも一年前に死んだ。
何かを信じる力も、もう残っていない。
そんな彼の部屋で、ある夜。
死んだはずのコマキの声が、スピーカー越しに名前を呼んだ。
「……リク?」
それをきっかけに、陸は
人間の意識・情報・エネルギーを巡る計画――
ゼロポイントエネルギー抽出炉(ZEF)実験へと関わっていく。
科学が魂を数式で表そうとした時、
世界の“重力”は、わずかに軋み始めた。