あらすじ
正大九年正月、金朝は国家存亡を賭け、十五万とも二十万とも言われる大軍を動員し、チンギスハンの四男、トルイ率いるモンゴル帝国軍との決戦に踏み切った。戦場となったのは河南の三峰山一帯。雪と吹雪に閉ざされた山岳地帯であった。
金軍は当初、正面決戦による突破を狙って進軍するが、モンゴル軍はスブタイ配下の機動戦術により直接の会戦を避け、補給線を断ち、偽装退却と奇襲を繰り返しながら金軍を極限まで消耗させていく。飢えと寒さにより金軍は急速に戦闘力を失い、統制は次第に崩れていった。
そして金軍が三峰山の狭隘な谷へ進入した瞬間、モンゴル軍は四方から一斉に包囲を完成させる。総司令トルイの指揮のもと、騎兵部隊は吹雪の中から突撃し、矢と機動力によって金軍の隊列を分断した。広大な兵力を持ちながらも疲弊しきった金軍は、局地的な衝撃に耐えることができず、瞬く間に崩壊へ向かう。
完顔合達、移剌蒲阿ら金軍指揮官は最後まで統制回復を試みるが、極寒と混乱の中で命令系統は機能せず、各部隊は孤立し各個撃破されていく。戦場はやがて組織的戦闘ではなく、逃走と虐殺が混在する混沌へと変わった。
さらに決定的な段階として、北方からオゴデイ率いる増援のモンゴル軍が到着し、残存兵の掃討に加わる。もはや抵抗は成立せず、金軍は戦闘能力を完全に喪失した状態で雪原に崩れ落ちた。
この戦いで金軍の主力はほぼ壊滅し、十五万規模の大軍は事実上消滅する。三峰山の決戦は、モンゴル帝国の戦略と機動力が、金朝の国家総力を正面から圧倒した象徴的な戦いとなり、金朝崩壊への決定的転機となった。