あらすじ
青渓村には古くから伝わる言い伝えがあった。
――金環月食の夜、滝へ近づいてはならない。
――滝の前の岩に美女が現れ、笛を吹く。
――その姿を見た者は帰れなくなる。
村長の息子である少年は、その言い伝えを聞いて育った。
十八歳の金環月食の夜、好奇心に負けた彼は禁忌を破り、滝へ向かう。
そこで出会ったのは、息を呑むほど美しい一人の女だった。
彼女は月の世界から追放された女だった。
遠い昔、人間の男と恋に落ちた罪で月へ帰ることを許されず、滝の奥に封じられているのだという。
故郷である月に思いをはせながら
そ自分を待ちながら老いて死んだ恋人を思いながら
女は今も笛を吹き続けていた。
いつか月へ想いが届くように。
いつか生まれ変わった恋人が、その音を聞いて帰ってくるようにと。