あらすじ
王都の外れでひっそりと工房を営む錬金薬師リオンは、「安全で効く」ことにこだわったポーションを作っていた。副作用を抑え、身体に負担をかけない代わりに効果は緩やか――その理念は戦闘の即効性を求める冒険者たちには理解されず、彼女のポーションはまったく売れない。
この世界では、「強く即効で効く」ことこそが価値とされていた。しかしリオンは、無理な回復は身体への“借金”になると考え、あくまで確実で安全な回復を信じていた。
ある日、工房に一人の少女が訪れる。彼女は「安全なポーション」を求めていた。明らかに毒に侵されている様子の少女に対し、リオンは従来の強力な解毒ではなく、毒を段階的に弱らせる“安全型”の解毒ポーションをその場で調合する。
結果、少女の症状は穏やかに改善し、確かな効果が証明された。
「安全で効く」という価値を初めて理解した存在との出会いをきっかけに、リオンは確信する――この思想は必要とされている。
小さな工房から、“強さ”ではなく“確実さ”で常識を覆す、新たなポーションの時代が始まろうとしていた。