あらすじ
「奴らを殺すのは容易い。だが、首をいくらはねたところで、江戸の闇は薄くならぬ」天明の大飢饉が遺した傷跡は、江戸の街に溢れる無宿人と凶悪犯罪という不条理な地獄を生み出していた。火付盗賊改方・長谷川宣以は、単なる厳罰による取り締まりに限界を感じ、独自の密偵網を用いた実証的な捜査を断行する。さらに彼は、犯罪の根源が「貧困と孤立」にあると冷徹に見抜き、罪人を社会復帰させる日本初の更生施設「石川島人足寄場」の創設という大局的な構造改革へと動き出す。すべての制約を獰猛な意志と論理でねじ伏せ、現場の人間学を武器に、江戸の治安空間を再配置しようとした一人の男の闘いの記録。