あらすじ
――生き延びるほど、葬式は増える。土に還すたび、誰かの秘密が露わになる。最後の鐘が止むとき、この町は自分で自分を弔う。
山脈に抱かれた閉鎖集落・霧鳴(きりな)。春先に持ち込まれた未知の感染症は、町をあっけなく削り取り、やがて十五人だけが残った。水は湧くが道は塞がれ、電波は死に、行政は来ない。彼らは円卓の規約を作り、死者が出るたび森の共同墓地に手を合わせる。奇妙なのは、埋葬のたびに死者の遺品や遺書、町の古い帳面が見つかり、それらが必ず「まだ生きている誰か」の秘密を暴くことだった。疑いは友情を崩し、愛は罪に触れ、希望は順番に枯れる。そして――感染源は“外”ではなく、最初からこの町の中にあったと判明する。誰も喪主を引き受けられない最後の葬式に向けて、十五人は自分の名をどう守り、どう失うのか。
主な登場人物(十五人)
柊 透(ひいらぎ とおる/17):高校生。記録係。妹の薬袋をいつも持ち歩く。
早瀬 灯(はやせ あかり/18):元写真部。喪の場でカメラを封印している。
佐久間 了(さくま りょう/28):臨時の統括。元給食センター職員。
雨宮 千景(あまみや ちかげ/33):元看護師。旧診療所を取り仕切る。
八重樫 弓(やえがし ゆみ/16):農家の娘。強いが脆い。
神崎 律(かんざき りつ/21):神社の跡取り。祠の鍵を持つ。
志摩 央(しま ひさし/45):元町役場。古い帳面の番。
沼田 岳(ぬまた がく/56):林業。重機を動かす。
片瀬 麗(かたせ うらら/14):発症を隠す。透に懐く。
古賀 真(こが まこと/36):配送運転手。外と道を知るが道は閉ざされた。
大浦 沙耶(おおうら さや/26):教師。読み書きを子らに教える。
鳥海 朋(とりうみ とも/19):双子の兄を失ったばかり。静かに怒る。
村井 つむぎ(むらい つむぎ/10):幼い。祈りが習慣。
長篠 桂(ながしの けい/61):寺の世話人。鐘を鳴らす。
葛城 砂(かつらぎ すな/48):雑貨屋。配給と秤の番。